
ストーリー・あらすじ
ジャンル | サイエンス・ファンタジー |
制作 | A-1 Pictures |
監督 | 石浜真史 |
構成 | 十川誠志 |
デザイン | 久保田誓、清水祐実 |
音楽 | 小森茂生 |
話数 | 全25話 |
声優 | 種田梨沙、遠藤綾、東條加那子、梶裕貴、花澤香菜、工藤晴香、高城元気、藤堂真衣、村瀬歩、浪川大輔、平田広明、etc. |
貴志祐介の長編小説が原作
本作はSFやホラーなどで知られる作家「貴志祐介」による小説を原作とした作品です。
ページ数は合計1000ページ以上にもおよび、文庫版は上・中・下の3冊に分かれるほどの長編小説になっています。
出版当時は「映像化は不可能」とまで言われた大作でしたが、2012年10月よりアニメ放送がスタートしました。
呪力を手にした人類たちの物語
物語の舞台となるのは今から1000年後の日本。そこでの人々は「呪力」と呼ばれる超能力を手にしていました。
脳内イメージによってそれを具現化できる力はまさに万能そのもので、ものを浮かせたり、火を付けたりと様々な事に応用する事が可能です。
主人公「渡辺早季」をはじめとする5人の少年少女たちもその呪力を備えており、結界に囲まれた人口3000人ほどの小さな集落「神栖66町」で力を駆使しながら平穏に暮らしていました。
しかし、学校行事の一環である夏季キャンプの際に偶然「ミノシロモドキ」と呼ばれる自走型端末(喋るロボット的なもの)を発見し、そこに残されていたデータからこの世界における衝撃の真実を知る事になります。
身の回りの平和が仮初めに過ぎず、実は大人による徹底的な管理と多くの犠牲の上に成り立つものであるという事実を知った時に子供たちは何を思うのか。
その日を境として、まるでパンドラの箱でも空けてしまったかのように彼らの穏やかな日常は崩れ始めていきます。
作品の見どころ
緻密に作り込まれた重厚な世界観
長編小説を原作としている事もあり、アニメとは思えないほど非常に細かい部分まで作りこまれた重厚な世界観が本作における魅力の一つでしょう。
呪力という特殊な力をはじめ「バケネズミ」と呼ばれる謎の生物や「悪鬼」「業魔」といった伝説上の怪物が存在するなど、ついつい惹き込まれてしまう要素がふんだんに盛り込まれていました。
また、サイエンス・ファンタジーというジャンル上、難解な単語も多数出てきます。
「愧死機構」「ラーマン・クロギウス症候群」「橋本・アッペルバウム症候群」など、何が何だかわからない言葉のオンパレード。
特に前半部分は伏線を多く張るための役割が大きいのでやや退屈に感じるかもしれませんが、後半にかけての盛り上がりが尋常ではないので我慢して見て欲しいです。
なぜ現代文明は滅び、代わりに人類は呪力を手にしたのか。そもそもバケネズミの正体は何なのか。
全ての点と点がつながって1本の線になった時の感動は言葉にしがたいものがあるはず。
3つの時系列から見たキャラクターの変化
『新世界より』という作品は大まかに3つのパートから構成されており、主人公たちの12歳・14歳・26歳という目線でそれぞれ話が進んでいきます。
時期ごとにキャラクターの見た目・性格が大きく変化していき、その変わり具合がまた面白いです。
子供の頃だからこそ抱ける理想と、大人になった事で受け入れなければならない現実。そのギャップが如実に表れている描写もあり、社会というものの厳しさがリアルに伝わってきました。
- とにかく重厚な世界観と設定
- ホラー作家ならではの不気味さ
- 中二病の心をくすぐる難解な単語の数々
- 後半にかけて勢いが増していくシナリオ構成
- 序盤はやや退屈気味な展開が続く
- 難しい単語が多すぎてたまに辛くなる
- 途中、作画崩壊レベルの回がいくつかある
個人的に好きなキャラクター
朝比奈覚(CV:東條加那子、梶裕貴)
主人公である早季の幼馴染。呪力の扱いに長けており、全編通して活躍し続けるキャラです。
頭の回転も非常に早く、ミノシロモドキとの出会いをキッカケにいち早く世界の真実に気付く事になります。
物語の終盤でバケネズミたちとの抗争になった際にはその優れた精神力で早季たちを導くなど、とにかくカッコいい男でした。
14歳、26歳時の声を担当されているのは梶裕貴さんなのですが、絶妙な演じ分けが素晴らしかったです。
スクィーラ(CV:浪川大輔)
バケネズミの集落「塩屋虻コロニー」の奏上役。
人間と同じ言葉が喋れるほどの高い知性を持ちますが、その裏では何やら企んでいる様子もあり何かと怪しいバケネズミです。
実際、物語におけるキーマンであり、後半はコイツを主軸に話が展開されていきます。
奇狼丸(CV:平田広明)
バケネズミの集落「大雀蜂コロニー」の総司令官。
優れた戦闘能力を有する戦士でもあり、劇中ではたくましい活躍を見せてくれました。
種の繁栄のためであれば命を捨てる事も厭わない勇敢なバケネズミでもあり、物語のラストでは人間対バケネズミの戦争を終わらせるためのカギを握ります。
総評
人を選ぶが、作品自体の完成度はものすごく高い!
正直、もっと評価されても良い作品だと個人的には思います。
非常に独特な世界観を持つため「万人受けしないアニメ」の筆頭として挙げられる事も多く、いまいち話題に上がらないというのが正直なところ。
しかし、そのメッセージ性自体は非常に面白く、「自分たちが生き残るためだったらどんなに酷い事でも平然とやってのける」といった人間のエゴや汚い部分が多く描かれているため、何かと考えさせられる事も多かったです。
つまるところ、人間の敵は人間なんだなという後味の悪さがこの作品の全てを物語っています。
「原作の方が面白い」といったド直球な意見もあるようですが、僕としては特に違和感も無く視聴できましたね。
ネタバレになるので詳しくは伏せますが、鳥肌が立つような衝撃のラストは必見です。
アニメとしては異質に見えるかもしれませんが、視聴後は必ず心にズシっと重くのしかかるような作品でした。
まとめ
以上、アニメ『新世界より』について個人的な評価を述べさせていただきました。
僕自身、これまでにもう5回以上は見直しているほどの大好きな作品です。
正直、ネタバレせずにその魅力を語るのは無茶な話でもあるのですが、少しでも興味を持っていただければ幸いです。