
まどマギ以来の神アニメ到来?
2019年1月にスタートした『ケムリクサ』というアニメ。
とにかく謎の多い世界観が最大の特徴で、放送中も多くの人によって考察され続けた作品ではありますが、特に全ての放送を終えてからの反響が大きいようです。
全話配信中のAmazonプライムなどを見てもこの通り。
レビュー数1200超えに対して総合的な星の数は4.5と非常に高い数字を見せています。
まとめサイトなどでも「まどマギ以来の神アニメが来た!」といった感じで取り上げられており、客観的な評価が高いのは間違いなさそう。
かく言う自分も最初は注目して見ており感想記事なども書いていたのですが、あまりにも話の内容がわからず途中でドロップアウトしてしまいました。
過去のページを見てもらえばわかるように、5話目までを境に突然更新が途絶えてしまっておりますw しかも考察も的外れなものばかり…。
「あ、多分これ最後にまとめて見た方が面白いヤツだ」と判断しちゃったんですよね。そういう作品ってあるじゃないですか。
で、実際に全話の配信が済んで評価が固まりつつある今、もう一度1話目から見直してみる事に。
この記事では、考察に関してはド素人である自分が『ケムリクサ』という作品を一気見した上で率直に感じた思いなどを書いていきたいと思います。
全話を通しての個人的な感想
序盤はやはり退屈だった
割と多くの人が同じような事を言っていますが、やはり序盤は退屈に感じました。とにかく意味がわからない事ばかり。
荒廃的な世界(おそらくほとんどの人類は滅亡している?)、「赤虫」と呼ばれる不気味な姿をした敵、不思議な力を宿した葉っぱ「ケムリクサ」などファンタジー要素が多く散りばめられているにもかかわらず、それについての直接的な説明がほとんど無いのです。
ナレーションやテロップのよる補足はおろか、登場人物の誰もそれについて詳しくは語ってくれません。伏線のためか、全体像については徹底的にボカされた形になっています。
公式サイトの「INTRODUCTION」を見ても次の通り。
赤い霧に包まれた、荒廃した建造物に囲まれた人気の無い世界を舞台に3人の姉妹が生き抜く物語。物語の中心的人物でまとめ髪の特徴的なりん、猫耳でいつもおっとりしているお姉さんキャラのりつ、メイド調の服に身を包み天真爛漫なムードメーカーりな。謎多き世界でこの姉妹が目指すものは一体…
(出典:ケムリクサ公式サイト)
うん、良くわかりませんね。
「なぜ世界は荒廃しているのか?」「他の人たちはどこへ行ってしまったのか?」など、本来であれば真っ先に説明して欲しいような事も序盤においてはほとんどスルーでした。
視聴者からすれば、どんな背景があるのかも良く分からないままに「どんよりとした暗い雰囲気の世界で仲良し姉妹+1人の少年が不思議な力を使いながら謎の敵と生き残りをかけた戦いを繰り広げる」のを毎回見せられているだけ。
これから話がどこへ向かっていくのかという予測が非常に難しく、中にはもうこの時点でうんざりして切ってしまった人も多いだろうなと思います。
実際、僕もリアルタイムで放送中の頃は序盤で視聴を止めてしまった人間の一人ですしね。
基本的には何もわからないまま話が進んでいくため、こんな調子で本当に大丈夫なのかと不安になってしまう事も多々ありました。
10話目以降から一気に面白くなる
ようやく面白いと感じ始めたのは10話目に入ってから。
それまではやはり謎が謎を呼ぶ展開が続き「もう最悪わからなくても良いかも(笑)」なんて若干投げやりになったりもしたのですが、ここからラストにかけての怒涛の伏線回収はすさまじかったです。
今まで謎だった部分のおおよそが補完され、「○○話のシーンはそういう意味だったのか!」といった感じでどんどん合点がいくように。
もちろん、依然として良くわからない部分もありましたが、こんな感じで後半一気に謎を明らかにしていくスタイルは嫌いじゃない。
それこそ、あの『まどマギ』を見た時と同じような感覚ですね。それまで我慢に近い形で視聴していた努力が実る瞬間とでも言いましょうか。
「ここまでわからない事だらけの物語を最終的にどう上手くまとめるのだろうか?」という不安の中で視聴し続けてきただけに、たとえ何となくであっても“終わり”が見え始めてきた事に対する安堵や達成感はかなりのものでした。
全体としてのメッセージは解釈が難しい
「お前の理解力が足りてないからだよ」と言われればそれまでなのですが、僕の場合は正直一回見ただけではこの作品におけるメッセージ性というものを良く理解できませんでした。
感覚的には何となくわかっていても、それを上手く言語化する事ができずに頭の中でモヤモヤしてしまう感じ。特に後半の追い上げが凄すぎたせいか、頭がついていけなかったんだと思います。
結局、僕はアニメを見終えた後しばらくネットサーフィンをして他の視聴者の考察などを眺める事に…。
ケムリクサってのは、一人の女の子が大好きな男の子を取り戻す為の物語やったんやなあ、って
壮大すぎる愛やろこれは
BSフジまで見て疲れたからフォロワーの人の感想は寝て起きたら見よう…つーか今日が休日で良かったwww
平日だったら何にも手がつかんわ#ケムリクサ pic.twitter.com/LjmfULMBYm— フェネック (@hudU92O1fN1CNWp) 2019年3月20日
ケムリクサ、この手のSFで「人為的な災害による荒廃」を招いたって話なら、たいてい凄まじい人数が関わるプロジェクトで愛憎渦巻く人間関係のもつれによって巻き起こるけど、まさかたった2人の愛の物語とは…。愛の物語っていうと凄い陳腐だけど、恋愛でも親子愛でも友情でもない、不思議な愛だよね
— た介ムリクサ (@BigotVinus) 2019年3月21日
ケムリクサを極限までシンプルに言い表すなら、「愛」これに尽きる。 骨太のSFで描くラブストーリー。これまで相手に対して愛を伝える言葉は登場していない、が、紛れもなく愛の物語である。 そもそも恋という概念が失われているしね。
— 塩豆☆大福 (@surefirea2) 2019年3月20日
どれもなるほどなと頷ける考察ばかりですね。あれだけ曖昧な表現のオンパレードにもかかわらず、よく簡潔にまとめられるなと関心してしまいます。
感受性が豊かな人だったり、理解力に長ける人であればこの作品の深みというものを存分に味わえるでしょうが、僕みたいな凡人にはどうやらそれも難しかったみたいです(笑)
おそらくですが、ケムリクサという作品は「セカイ系」というジャンルに分類されるのではないかと個人的には考えています。
セカイ系という言葉を表す上で明確な定義というものは存在せず、その捉え方は基本的に各々の判断に委ねられるようですが、僕がこれまでに見てきたセカイ系と呼ばれる作品の共通点としては「登場人物が極端に少ないのに話のスケールはやたら大きい」「全体的に説明不足で世界観や設定が謎」「最終的に何を伝えたかったのかがわかりにくい」といったものがありました。
ちなみに、サブカルチャー評論家の東浩紀さんによれば次のような要素を含む作品はセカイ系に該当するとの事。
「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと」
(出典:「美少女ゲームの臨界点」東浩紀)
これ、まさにケムリクサの事を指しているように感じるんですよね。
結局、ケムリクサはその世界観における謎を直接的に表現する事はほとんどなく、あくまでその場の雰囲気や最小限のセリフによって視聴者にそれとなく伝えようとする姿勢が目立ちました。
だから全体的に非常にわかりにくく、人によって解釈が大きく分かれるのだと思います。
事実、ケムリクサに対する評価も二極化が激しく、「面白い」と言っている人と同程度もしくはそれ以上に「つまらない」と言っている人がいるわけです。
考察の余地があるというのは非常に素晴らしい事ですが、あまりにも難解すぎると好みが極端に分かれやすいというのはやはりセカイ系作品におけるお約束なのかもしれません。

総評
総評としては、かなり人を選ぶアニメだと思いました。
何度も繰り返すように、とにかく全体的に説明不足な部分が目立つのでイライラする事が多々あります。
また、伏線の回収が最終話近くに一気に集中しているため、ぶっちゃけ序盤~中盤にかけてはかなり退屈でつまらないです。
「わからない事を楽しめる」人でなければ素直に視聴し続けるのは難しいでしょう。
ただ、逆に考察する事に対して喜びを感じる方であれば、これ以上に楽しめる作品もなかなか無いのかなと思います。
どちらかと言えば玄人向けの作品なので、ライトな視聴者にとっては辛い部分も多いかもしれません。
あとは「どれだけ制作陣を信じられるか」というのもこの作品を視聴する上で重要なポイントだったりします。
それもそのはず、このケムリクサという作品を手掛けているのはあの大ヒットアニメ『けものフレンズ』の監督を務めた「たつき」さんだからです。
「たつきさんの作品なら絶対に大丈夫」と思えるのであれば、根気強く最後まで見れるのではないかなと。
最後まで全て視聴できれば面白い事に間違いないのですが、そもそもそこへ至れる人が限られるという点がこの作品の弱みだと個人的には思います。
そういう作風なので仕方ないんでしょうけどね。
絶賛している人が多いからといって安易に視聴し始めると「アレ?」となるかもしれないのでご注意ください。
長くなってしまいましたが、最後に要点をまとめておきます。