
未来を語る上でイスラエルは必要不可欠?
「イスラエル」と聞いてパッと浮かぶイメージにはどんなものがありますか?
僕は学生時代、世界史を選択していた事もあり、「古くから宗教絡みの紛争が多い地域」といった認識くらいしかありませんでした。
しかし最近、経済紙やニュースサイトなどを頻繁に巡るようになってその名を目にする機会がグッと増えたのです。
かつては血にまみれた国であったイスラエルですが、近頃ではITやバイオといったハイテク分野での発展が目覚ましく、「科学技術先進国」としての側面が強くなってきているとの事。
今、世の中は「AI」「IoT」「○○テック」といった言葉がトレンド中のトレンド。もはやテクノロジーの知識無しには語れない様相を帯びてきています。
従来よりハイテク大国と言えばもちろんアメリカなわけですが、こりゃイスラエルも注目せざるを得ないなと。
そこで、何か良い本は無いかと物色していたところ、面白そうな本を見つけたので読んでみました。
そもそもイスラエルってどんな国なのか?
なぜユダヤ人は勤勉で賢いのか?
気になっていた事が良くわかる本でした。
思っているよりも自分の周りはイスラエルだらけ
意外かもしれませんが、僕たちの周りにはイスラエルで生み出された技術で溢れているそうです。
たとえば、僕らが日々仕事などで使っているパソコン。
もしそこで使われているプロセッサーが「インテル製」のものであれば、それはイスラエルで作られたものである可能性が高いでしょう。
というのも、インテル製のプロセッサーはその8割以上がイスラエルにある工場で作られているから。
また、僕たちは毎日のように、Googleを使って情報収集をしていると思います。
気になるワードを打ち込んだ際に横に出てくる予測変換、正式には「グーグルサジェスト」なんて呼ばれたりもする機能ですが、これも実はイスラエルで開発された技術だそうです。
他にも、自分のパソコンを不正アクセスやウイルスから守ってくれる「ファイアウォール」を開発したのもイスラエルの企業。
まだ僕らの生活に直接影響を及ぼしているわけではありませんが、近い将来実現するであろう自動運転やドローンの操縦といった分野においても、イスラエルは世界をリードしていると言われています。
冒頭でも言ったように、今の世の中はハイテクで溢れています。
つまり、イスラエルの存在を無視する事は出来ないという事ですね。
イスラエル人はなぜ賢いのか?
数々のハイテク技術を産み出してきたイスラエルですが、なぜ彼らはそこまで賢いのか?
イスラエルは人口はたったの800万人程度しか無いにもかかわらず、人口1人あたりの知的レベルの高さは世界でも傑出しているそうです。
もともと、イスラエルはユダヤ人がパレスチナの地域へ移住して建国した国。
ユダヤ人と言えば、歴史的に迫害され続けてきた民族です。
ナチスドイツが行ったホロコーストなどは有名ですよね。
建国間もないイスラエルは、当然のように外国からの攻撃を受けます。
これが中東戦争の始まり。
つまり、イスラエルは“周りが敵だらけ”の環境で発展してきたという事です。
日々攻撃に晒される環境下で生き延びるためには、技術や発明といったものは必要不可欠だった。
だから、必然的に学ばざるを得なかったわけです。
ユダヤ人はもともと勤勉な民族でしたが、近年のシオニズムの高まりとともにさらにその特性を伸ばしていったというわけですね。
イスラエルで生まれた子供は早くから英語、数学、プログラミングといった教育を受け、18歳になると男女問わず軍より徴兵されます。
中には「タルピオット」や「8200部隊」と呼ばれる最先端技術を擁したエリート部隊も存在し、才能を見出された若者はそこへ配属される事になり、さらなる高みを目指します。
起業大国イスラエル
イスラエルはとにかく失敗を恐れない。
長い事迫害され、特定の国を持たなかったユダヤ人は世界各地へと離散していきました。
生き残るために放浪の旅を続けたユダヤ人は、その意味ではかなりのリスクテイカーと言えるでしょう。
ゆえに、イスラエルは「起業大国」としての側面が強く、毎年3000~4000ものベンチャー企業が誕生するそうです。
もちろん、その中で成功する企業はほんの一握りなわけですが、イスラエルの人々はそんな事気にしません。
失敗を是とし、許される気風が醸成されているからです。
古くより「生存」が第一の命題であったユダヤ人にとって、死ぬ事以外は大した失敗としてカウントされないのかもしれません。
起業を行うのは、主に若者たち。
イスラエルの若者たちは、そのほとんどが一度は海外へと出ていくそうです。
徴兵制を終えた彼らは、アルバイトなどでお金を溜め、半年~1年ほど海外旅行へ出かけます。
そこでグローバルな視点を身に着け、自分のやりたい事を見つける。
帰国後はその経験をもとに大学を慎重に選んで進学します。
日本においては高校卒業後、つまり18歳くらいでそのまま大学へ進学するのが一般的ですが、イスラエルの場合は男性なら23歳前後、女性なら21歳前後での進学がザラなんだとか。
日本の場合、とりあえず大学といった感じで目標が曖昧なまま進学してしまう人も多いですが、イスラエルの場合はやりたい事が明確に決まった状態で大学へと進む人が大半なので、こういった部分もベンチャー精神を育んでいるのでしょう。
海外へ旅する事で、世界情勢や市場のニーズといったものもダイレクトに掴む事ができるので、起業に向けた土台作りもできているわけですね。
イスラエルに学ぶ事
正直、この本を読むまでイスラエルを舐めていました。
というより、認識が足りな過ぎた。
中東やアジアと聞くと、どうしても貧乏だったり技術的に遅れてる国だったりといった印象が強いのです。
これは自分の勉強不足が大きな原因でもあるわけですが、これからはその認識を改めなければならない。
日本人もどちらかと言えば完璧主義者が多い人種。
その粘り強い気質は様々な技術を産み出し、一気に日本を世界トップクラスの経済大国へと持ち上げたわけですが、どうも最近は停滞気味な雰囲気が漂っています。
それはやはり、どうしても失敗を恐れてしまう人が多いのが原因でしょう。
僕もどちらかと言えばそっちのタイプ。
島国という特性上、外部からの侵略を受ける心配の少なかった日本。
一方で周囲を外敵に囲まれ、日々危険に晒され続けてきたイスラエル。
この辺の危機感の違いが、ベンチャー精神における大きな差を生み出しているものと思われます。
このままでは日本の世界的なプレゼンスは下がる一方かもしれません。
実際、現在アメリカではイスラエルへの関心が非常に強く、日本は依然ほど注目されてはいないのだそうです。
人口は減っていく、技術もいまいち振るわない。
そんな状況になってしまったら日本は終わりだなと。
別に僕1人が意識を変えた所でどうしようも無いのでしょうが、良い意味で危機感を煽られる良い本だったという結論で終えます。